◆ 問題解決型のフレームワーク
◆ QCストーリー と QC7つ道具 実践例紹介
◆ QC教育初級者レベル
について記述しています。
なお、事務系ビジネスパーソンの方は、以下も御覧いただければと思います。
サマリー この記事は、事務系ビジネスパーソン向けの、時間効率と品質改善に関する記事です。 仕事を進めていく上で、 『もう少しやりやすくしたいけどどうすればいいのか分からない』 『特定の業務にすごく時間が[…]
以前の記事で、品質管理(QC)は、仕事術そのものだとお伝えしました。
もしまだ記事を読まれていない方は、以下記事を一読ください。
本記事は、 ◆ 品質管理(QC)の概要 ◆ 製造業・非製造業に共通する仕事基礎力 ◆ 新人・若手社員が最初に身につけるべきTips となります。 品質管理(Quality Control: QC)ってご存知[…]
本記事では、問題解決の『型』、いわゆるフレームワークをお伝えします。
また、筆者が前職のメーカー在籍時にQCサークルに参加し、社内コンペで金賞をとった実例を交えながらお伝えしたいと思います。
QCストーリー と QC7つ道具
QCストーリーの種類
QCでは、問題解決に至る手順(=型)として、以下の2種類に大別されます。
◆ 問題解決型・・・日常の仕事で発生した問題を改善する手順
◆ 課題達成型・・・新たな仕組みを設定して目標達成を狙う手順。目的や狙いは高いレベルで設定される。
これらの実践する手順のことを、「QCストーリー」と呼ばれます。
そして、QCストーリーには、問題解決型QCストーリーと課題達成型QCストーリー があります。
上図にある通り、問題解決型の手順は、現状とのギャップが比較的小さい場合に用いられます。
一方で、課題達成型は、現状とのギャップが大きい場合に用いられます。
次項では両者の違いについて、もう少し詳しく見てみましょう。
問題解決型QCストーリー と 課題達成型QCストーリー の違い
例えば、問題解決型は「既に実行中に施策に対する改善」、課題解決型は「新しく設定された目標に対する新しい取り組み」というイメージ感となります。
一覧にするとわかりやすいので、表にまとめます。
問題解決型 | 課題達成型 | |
目標 |
・現状レベルを更に向上させたい。 ・現状の仕組みに大きな変化は与えず、課題を潰したい。 例:売上目標の達成、不良の削減、マンネリ打破 など。 |
・現状のレベルを打破したい。 ・達成水準を飛躍させる際に、現状の仕組みを打破してもよい 例:売上の倍増、桁違い品質 など |
達成手法 | 現状の仕組みの中で、問題の原因究明を行う | アイデアを立案、最適策を追求と実施し、狙いを達成する。 |
効果 |
・問題の原因を解決 ・再発防止 |
予想される課題やシナリオを潰しこみ、問題を発生させない |
端的にいうと、問題解決型は現状の改善、課題達成型は仕組み自体を変えながら目標を達成する手法です。
よって、QCストーリー(手順)自体が大きく変わってくることになります。
QCストーリー以下の手順になります。
本記事では、問題解決型について、深堀りしていくことになります(後述)。
QC7つ道具
図. QC7つ道具(絵・とりぞー)
本記事では、概要を解説しますが、詳細を知りたい方は以下図書がおすすめです。
1.チェックシート
チェックシートは目的によって、「調査用チェックシート」、「記録用チェックシート」に大別されます。
調査用チェックシートは、問題の状況を調べるために用いられ、どの部品や機械でどれくらいの頻度で不具合が起こっているかを調べて原因をつかみます。
記録用チェックシートは、あらかじめ決めたルールが正常な状態にあるか定期的に照合して点検します。
上図のチェックシートはQCでは頻繁に使用される表であり、チェックした回数分の斜線を記載しています(最大チェック回数を5回としています)。
チェックシートの形式は様々あり、例えば工場の始業点検表なども一種のチェックシートになります。
2.パレート図
パレート図は、不良品や製品の欠点、あるいは市場クレームなどによる損失金額などを、事象は要因別に分類してデータ整理したものです。
一般に、横軸には「要因別」、左軸は「件数や金額」、右軸には「割合」が記載されます。
使用する目的としては、対策のプライオリティづけです。
パレート図を用いることで、各要因の頻度や影響度を可視化することが可能になります。
3.特性要因図
特性要因図は、課題の特性(もしくは結果)に対して影響していると考えられる要因を分類し、矢印で関連付け系統的に可視化した図です。
使用する目的は、問題が起きる要因を明らかにし、特に主要因の発見もしくは見当付けに使用されます。
通常、要因は複数存在する事が多いため、各要因に関連するメンバーを集めてディスカッションしながら特性要因図の検討が推奨されます。
4.散布図
エクセルシートでもおなじみの散布図。
散布図とは、原因(X)と結果(Y)、あるいは、要因(X)と特性(Y)、のように2つの関係を解析するために用いられる手法です。
使用する目的は、着目した原因あるいは要因(X)が、測定結果や特性(Y)とデータとして相関があるかどうか見極めることです。
見当付けをした因子(X)が本当に原因であるならば、結果(Y)に対してデータとして強い傾向が現れることになります(これを、「相関」と言う)。
5.ヒストグラム
ヒストグラムでは、バラツキが存在するデータ(例えば、製品の寸法、室内温度など)を分布を確認する手法です。
使用する目的は、分布の度合い(平均、異常値の有無、偏差、工程の安定度など)を確認することです。
統計・確率の知識を利用しますので、もしご存知でない方は以下の書籍が参考になります。
6.管理図
管理図は、特性値のばらつきから管理線(上図の点線)をあらかじめ求めておき、日々の生産ロットから数個~数十個を抜き取ったデータを打点し、平均線(上図の実線)を加えたグラフのことです。
使用する目的は、点の位置や並び方により工程の異常や不安定を発見することです。
たとえば、上図では、上の管理線を超えているので明らかに異常が認められます。
また、平均線を◯個連続して下回った(上回った)、△個連続して上昇傾向(下降傾向)、上昇と下降が一定周期で繰り返す、など、データに連続性が認められる場合は、何らかの要因が隠れている可能性が高いです。
7.層別
層別とは、要因別にデータをグループ分けして比較・解析する手法のことを言います。
上図にある通り、互いに相関が薄い要因Aと要因Bがあり、それらを個別でデータを抜き出して解析しています。
本手法の目的は、異常の原因となりうるものに切り分けて調べることです(例えば、各作業者で品質差があるか、各機械で問題傾向はないか、各時間帯で性能差があるか、など)。
最終品質には、作業者の習熟度や、機械の個体差、製造温度差などの影響がそれぞれ関与します。
同時に、最終的な品質データは全ての要因の影響が「加算」された状態であるため、個別に対策を打つ際には各要因の影響度を切り分けて検討するべきです。
各要因を混同したまま議論しても有効な対策を打つことは難しいため、層別に切り分けて議論するべきでしょう。
新QC7つ道具
先述のQC7つ道具はデータ解析に重点が置かれていましたが、「新QC7つ道具」では言葉の整理に重点が置かれた手法となります。
なお、新QC7つ道具はやや応用発展的な部分があるので、本記事では頻出手法のみに絞り紹介します。
もし詳細を知りたい方は以下書籍を参考にしてみてください。
1.連関図法
上図は後述するQCストーリーでも登場しますが、対策の緒を見つけたい場合に使用される手法です。
ある課題や解決したい事象に対して、要因が複雑に絡んでいる時に全てを整理したい場合に使用されます。
作成手順としては、問題点を決めて図の中央に記載し(赤枠)、そこから要因と結果の因果関係を矢印でつないでいきます。
特に強い関係がありそうな矢印を太く記載し、これを主要因として結論をまとめていきます。
2.親和図法
親和図法は、テーマに関して関係者が日々感じていることを「言葉」で表し、各々の共通点をグルーピングしていくことで解決策やその方向性をまとめる手法です。
よく「ポストイット」などを使って、議論されることも多いです。
これによって、各参加者が考えている共通認識をすり合わせることができるので、親和図法を用いることは参加者の意見をまとめやすいというメリットがあります。
3.系統図法
問題を解決するための手段と具体策を検討する上で用いられます。
たとえば、「〇〇という問題を改善するため」の目標に対して、ダブリがないように大分類(=観点・切り口)を設け、手段と具体策を講じていきます。
同様の手法は、「ナゼナゼ分析」などでも多用されます。
上図の内容や使い方については、後述のQCストーリーの中でも触れます。
4.マトリクス図法
よく「星取表」と称されることも多いのですが、テーブルを作り、縦軸が問題点あるいは解決策、横軸が評価項目からなるマトリクスになります。
使用の目的は、客観的な意思決定を行うことです。
この手法はQCではよく用いられますし、通常業務でも時折登場することがありますので、知っておくべきでしょう。
また、重要な評価項目については、「x2」をするなど、評価点の重み付けをしても構いません。
5.PDPC法
営業部門の受注、研究開発などの意図する方向に進むとは限らない不確定さが多いプロジェクトの実行計画立案などで用いられます。
いわゆる、フローチャートを作りながら、事前に考えられるあらゆる結果を予測し、望ましい結果を得るために必要となるプロセスを事前検討する際に用いられます。
6.アローダイヤグラム法
作業全体の流れや要する時間を把握するために、ボトルネックになりうる工程を見つけ、管理する際に用いられます。
各工程を矢印でつなぎ、要する日数を書き込んで、スケジュール破綻やその危険性の有無を確認していきます。
7.マトリクスデータ解析法
マトリクス図法で配列された多くのデータを統計的に計算し、相関性をグラフで表し、色々なデータを見通しよく整理する手法です。
問題解決型のQCストーリー<QCサークルの実践例>
では、ここから問題解決の型について、筆者が実際に取り組んだQCサークルの実例を交えて、説明します。
テーマの選定
自分たちの職場にある問題を列挙します。
その際に、以下のような着眼点をもって検討すると良いでしょう。
品質を生み出す構成要素(QCDPSME)
✔ 品質 (Quality)
✔ 原価 (Cost)
✔ 納期 (Delivery)
✔ 生産性 (Productivity)
✔ 安全 (Safety)
✔ モラル (Moral)
✔ 環境 (Environment)
生産の構成要素(4M)
✔ 作業者(Man)
✔ 機械/設備 (Machine)
✔ 材料(Material)
✔ 方法(Method)
ムのつく3つの要素(3ム)
✔ ムダ(無駄)
✔ ムラ(むら)
✔ ムリ(無理)
問題の絞り込み
星取表でテーマを選定する
上記の例では、生産に分類される項目から、「○○(車種)投入工程の作業性向上」の点数が最も高く、テーマ選定されました。
また、選定されるに至った問題背景について、しっかり説明していきます。
現状把握&目標設定
現状把握
現状把握として、まず定量化をしていきます。
そのため、現状を示すデータを集めていきましょう。
そして、あるべき姿(管理値、目標値)と比べてどれくらいギャップが有るのかを確認していきます。
集計した結果を、パレート図やグラフなどに整理するとよいでしょう。
目標値の設定
現状把握とあるべき姿を比較後、以下を決定していきます。
活動計画の作成
円滑に活動をすすめるため、活動計画を作成していきます。
問題解決型の手順に沿って、ガントチャートで記載してくと良いかと思います。
要因分析
要因分析とは、特性(改善しようとしている問題点)の原因を発見する作業を言います。
QCでは、特性要因図を用います。見た目より、「魚の骨」と言われることもあります。
また、特性要因図と同様に、「連関図」という手法もあります。
こちらは、簡易に要因分析を行いたい場合に用いられます。
たとえば、グループでブレーンストーミングして、簡単に解決に導けると推測される場合に使用されるケースが多いです。
分析のポイント
✔ 三現(現場・現物・現実)で、考えること
✔ 悪さ加減を定量的にすること
対策方法の検討
改善に必要な施策を、意思決定していきます。
いくつかの具体策を出し、それぞれの効果、難易度、経済性、機能担保性などを考慮します。
このとき、系統図と、先述で紹介した星取表との組み合わせが役に立ちます。
対策の実施
対策を計画的に実行するため、「誰が」「どのように」担当するのか、実行計画書を作成します。
項目 | 担当 | 実施する具体策 | 期限 |
講義の開催 | 中田・平田 | 講義内容の策定、テキスト作成、会議室予約、周知 | 7月15日 |
センサの配置 | 中村・森・浅村 | 改修内容の確認、ベンダー確認、設備会社と打ち合わせ | 7月30日 |
ストックヤードの移動 | 藤原 | 新しい場所の確保、移動品の整理 | 8月20日 |
歯止め効果の検証
具体策を実施し、実施前後の効果を測定します。
どれくらい差がでたか、目標値は達成できたか、を評価していきます。
一般的に、用いるグラフとしては、パレート図・棒グラフ・折れ線グラフなどを用いることが多いです。
◆パレート図による効果測定(左:実施前、右:実施後)
◆棒グラフや折れ線グラフによる効果測定
標準化と管理の定着
最後の総仕上げとして、実施した具体策の定着化を図ります。
標準化とは、具体策を定着させることを言います。
大きく分けて、ハード対策(設備更新、システム導入など)とソフト対策(プロシージャの変更など)に大別されます。
標準化の推進に、下記のような取り組み例が実施されます。
✔ 作業標準書の改訂
✔ その後の品質水準の継続確認
✔ 定期的なトレーニングや相談会の開催
まとめ
QCの問題解決型ストーリーを理解し、問題解決のフレームワークを学びました。
これは工場や製造業だけではなく、あらゆる業界/業種で広く活用できます。
また、自分なりに型を崩して使うでもいいと思います。
成果が出せずに悩まれている方も、ぜひ取り入れていただき、習慣化してもらえればと思います。