興味があれば、お読みいただくとよいかと思います。
日本における課題、世界の動向や教育については、こちらの図書を読んで頂くとよいかと思います。(サクッと読めます)
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本記事では、仕事・子育ての「現役世代」がなぜ学び直しが必要とされているのか、筆者が感じていることを記述します。
日本人の知識が”陳腐化”している、という感覚
日本国内にストックされる”最先端知識”の数が純減している
以下は2018年時点のデータとなります。
出典:文部科学省
資源のない日本が世界第三位の経済大国である理由は、紛れもなく技術立国であるからです。
ここで、筆者が着目するのは、産業直結分野における論文数が減少しているという事実です。
たとえば、計算機、工学、科学、材料物性分野は顕著であり、これらの学問は、日本の屋台骨である「電機」「自動車」「化学品」メーカーに直結する学術分野です。
これまで、これらの産業技術が世界的に”大きな”優位性があることが、日本人が資源もない「日本」という国で豊かに暮らすの前提条件であったわけです。
しかしながら、2010年代以降、その前提条件が緩やかに崩れつつあるのではないかと考えています。
知識の陳腐化が早まっている
冒頭で紹介した大前研一氏は、以下のように述べています。
社会全体のデジタル化により既存の産業が破壊される時代においては、大学や大学院で学んだ知識であったとしても一瞬で陳腐化してしまう。それだけで定年まで乗り切ろうとする発想では生き残られない。老後の生活費が公的年金だけでは不足することを考えると、生涯にわたり稼ぎ続けることができる力を、誰もが身に着けなくてはならない時代になったと言える。
デジタル化に伴い、情報伝達の速度が早まることになりました。
インターネットを使えば、世界のどこかに存在する情報が、どこでも、誰でも手に入れることができます。
デジタル化が進むことで、情報入手に対する「障壁」が無くなりました。
新しい情報が萌芽した後に直ぐに吟味され、有益なものは多くの国に直ぐにビジネス転用され、やがて成熟した後に枯れていきます。
同時に、新興国の台頭も合わせてライバルの数も増え、情報のライフサイクルも格段と早くなってきています。
知識は、「情報」に「経験」が加わったものと考えるとリードタイムがあるため、既に使用済みや使い古された情報であるとも捉えられます。
つまり、学んだ知識が、数年で直ぐに陳腐化し、新しい技術や情報に置き換わることが多くなっています。
世界トレンドに日本がいなくなった
先述の通り、産業直結分野の基礎研究論文数が減少の傾向にあります。
この傾向は、早くもビジネス状況にも現れているように筆者は感じています。
仕事をしていると、日本に注力していた外資系企業が、2010年代に入るとリソースの再配分に着手する企業が多くなってきています。
リソースの再配分というのは、日本に駐在する人員を削減する(もちろん、整理解雇を含む)ことを意味します。
一例を紹介します。
世界を見ると、デジタルトランスフォーメーション(DX)やIoT、機械学習の導入が盛んですが、ある米国系B2B企業の販売担当者からこんな話を聞きました。
海外では多くの企業が数十億円の「買い物」をするのが海外では当たり前になっていますが、日本企業はこうした大規模投資に相変わらず及び腰の状態。日本ならではの重箱の隅をつつくような質問をしては、購入に至らない。いや、購入しないと決断するのであればまだしも、決断せずに先延ばし。それだけ新しい仕事のやり方を受け入れない人が多いってことですよ。
この最後の、「新しい仕事のやり方を受け入れられない人が多い」という部分が重要だ、と私は考えています。
おそらく、反対する人はそれなりの経験があり、”それらしく感じる”ものがあります。
しかしそのロジックは、陳腐化した知識のもとに立脚されている場合も多いのではないでしょうか。
これでは、まともに判断ができませんし、判断にも自信をもてません。
結局、先程の例では昨年、担当者を含めて人員整理となり、その会社の半分の人員が削減されることになりました。業績は好調であるにも関わらず、です。
このような格好で、多くの外資系企業がもつ日本市場へのビジネス期待値が下がりつつあり、欧米、中国、ASEAN各国へとシフトが始まっているのです。
人生「100年時代」の到来
残り「70年」の人生プランを
医療や公衆衛生の発達に伴い、2000年代生まれの50%が、寿命100歳を超えると言われています。
例えば、2007年生まれの平均寿命が、107歳になるとの研究報告もありました。
これに伴い、社会保障費の観点から、年金受給資格年齢が順次引き上げが推測されます。
いま30代、40代の子育て・労働現役世代は、残り70年の人生プランを設計しなければなりません。
大学で学んだ知識が、既に陳腐化している
知識の陳腐化が早まっているため、大学で学んだ知識は10年もすぎれば賞味期限切れになる可能性があります。
私自身、10年前に大学院で電気工学を専攻していますが、当時は最先端学問であったものの、今日では既に陳腐化しています。
知識というのは、「情報」が「経験」のうえで体系立っており、それがやがて「学問」と呼ばれるものになります。
これはつまり、「破壊的イノベーション」が発生するとこれまでの経験が通用しなくなるので、学問が「再構成」されるのです。
そして、この再構成された知識の学び直しが、リカレント教育と呼ばれるものになります。
10年区切りで大きな学び直しが求められる
当たり前の話ですが、年齢を重ねるごとに、大学時代あるいは入社時研修で習得した知識は陳腐化していきます。
勿論、大学あるいは入社時以降も常に知識のインプットを継続する人もいるかと思いますが、忙しいビジネスパーソンにとって、学習機会を別途設けられていない人も多いのではないでしょうか。
国が検討している、本来のリカレント教育は以下のような構想です。
・ 先行分野におけるプログラム開発
大学・専門学校・民間教育訓練機関に委託し、産学連携により、20 程度の分野(AI、センサー、ロボット、IoTを活用したものづくり、経営 管理、農業技術、看護、保育、企業インターンシップを取り入れた女性の 復職支援等)において先行的にプログラムを開発し、逐次全国展開する。
また、業界団体、学会等と連携して実務型プログラムを大幅に拡充し、 アーカイブを積極的にオンラインで提供するとともに、民間が運営してい るリカレント教育の講座情報を提供するホームページをネットワーク化 し、総合的な情報提供を行うポータルサイトを整備する。出典:首相官邸
以上より分かる通り、教育機関を通じて、「再構成された知識の学び直し」がリカレント教育の趣旨になるのであろうと考えます。
同時に、これは従来の”生涯学習”というものと、全く別物であることがわかるでしょう。
大前研一氏は、先述の著書で以下のように述べています。
リカレント教育とは、基礎学習を終えた社会人が、自身のキャリアのために10年ごとなどに学び直しを繰り返し行うことである。
このように、人生100年時代を生き抜く上で、目安10年おきの学び直しによる知識のアップデートが必要になってきているのです。
「リカレント教育」に対する環境は、現状で未整備である
ここまで「リカレント教育」の重要性を述べてきたが、一番の問題は、社会環境がまだ対応できていないことにあります。
(まぁ、本記事ではそのコト自体の問題提起になっているのでしょうが・・・)
リカレント教育に関する助成制度(※後述)があったり、一部の教育機関で実施しているものの、一般のビジネスパーソンが享受するにはまだ大きなハードルがあります。
理想的にはしっかりと教育機関で学び直すことではありますが、本日時点ではあまり現実的ではありません。
よって、現実解としては、以下になるのではないかと考えています。
✔ 知識の陳腐化を抗うために、10年程度で学び直す必要性の理解
✔ 自身のライフスタイルに沿った学習方法の実践
1点目はもう既にご理解されるところだと思いますが、2点目は結局のところ、学び方自体、各ビジネスパーソンに委ねられるところになります。
つまり、何を学ぶ必要があるのかは各ビジネスパーソンによって異なるでしょうし、何を学ぶかによって学び方は異るからです。
学びの実践例
例えば、リカレント教育では以下のような学問の学び直しが行われています。
・先端技術・・・IoT、DX、深層学習/機械学習 などの先端技術習得。プログラミング教育(Python等)
・語学学習・・・英語、中国語学習など
・経営学・・・生産性向上(CRM、ロボットオートメーションなど)、MaaS、CASEなど
これらの学習には、数多くの書物あるいは数多くの民間スクールもあります。
民間サービスを活用して、自主的にリカレント教育を進めていくことが現実的、かつ実践的ではないかと思います。
まとめ
人生100年時代を生き抜くために、知識の陳腐化を防ぐ必要性について、ご理解いただけたのではないかと思います。
私自身が、まだまだ研究中ではありますので、理解を深める必要があります。
真のリカレント教育については、大前研一氏の図書が参考になりますので、もしご興味があれば一読いただくのが良いかと思います。
<推薦図書>
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